四季盛農園 式森彦人が、果樹・みかんの栽培から販売について、約1年間執筆した月刊誌「現代農業」への平成27年の寄稿文を紹介します。

現代農業平成27年8月号先輩農家からのアドバイス

防 除


ハダニ対策の裏ワザ! 秋にマシン油


 防除は3月のマシン油散布から始まり、5月、6月、7月、9月と計5回、貯蔵品種はプラス殺菌剤1回、これが自分自身で納得できる品種を提供するための最低限の防除回数だと考えています。それぞれ黒点病とハダニの防除をベースにして、その時期に合った殺虫剤を混用しています。最近は、古くから使われてきた、安価でそこそこ効果のある農薬がどんどん姿を消しています。新しく発売される農薬は価格が高く、経営を圧迫していますね。
 突然ですが、ここで非常識な裏ワザを二点。一つ目は次の通りです。9月の最終防除が終わったあと、ハダニが死んでいない、つまり高いダニ剤が効かなかったことがあり、仕方なく別系統のダニ剤を散布したのですが、まだダニが動いていました。そこで物理的にダニを殺せればと、薬害覚悟でマシン油を散布したところ、薬害もなく、ダニもいなくなりました。
 もう一点。私はレモンを「大阪エコ農産物」として栽培していますが、10月中旬、一回目の収穫時にハダニが部分的に発生したことがあります。(エコ農産物とは、消費者に安心安全なものを提供するという、大阪独自の認証で化学肥料と農薬は慣行の半分以下)。農薬使用限度の6カウントすべて使いきった時期だったので、エコ農産物の申請を取り下げてダニ剤を散布するか、それともレモンの商品価値が下がってもこのまま栽培を続けるかを
迷ったうえで、農薬としてノーカウントマシン油を低濃度(400倍)で散布。すると、
ハダニが時間とともにいなくなり、この二律背反の問題を一挙に解決できました。
 マシン油は薬害の観点から、秋には使用できないと考えていましたが、安心で安価、しかも天敵を殺さない自然界にやさしい農薬です。さまざまな使用方法の可能性があるように思われます。

カイガラムシに手を焼いている
 サンホーゼカイガラムシとは不思議な害虫ですね。十数年前から各園で部分的に発生し、去年はえらく被害がでた場所でも、今年はウソのようにいなくなるなど、年によって発生場所が移動します。どうしても完全防除できないため、防除時期を前後7~10日ずらしてみたり、今まで使っていた農薬(エルサン乳剤)には効果がないと結論づけて、その後、いくつかの農薬を変えてみたのですが、結果は同じでした。指導で特効薬と呼ばれるものを散布したときは、おそらく天敵まで殺したのでしょう、主枝、側枝まで枯らしてしまい、かえって被害を大きくしたこともありました。今はエルサンをベースに、他の殺虫剤を混用して結果を見ているところです。
 放任園のほうがかえって被害がないところを見ると、どうもこの虫は自然界の微妙なバランスのなかで増えたり減ったりを繰り返しているように思われます。経済栽培ではムリかもわかりませんが、無農薬もしくは殺虫剤を使わない防除が有効なのかもしれません。

カミキリムシは微生物農薬で
 ミカンの価格低迷が長く続き、放任園が増え、それに伴ってカミキリムシの被害も増加しています。そして、昔と違って自分の園で幼虫の駆除をする人もいなくなり、それもカミキリムシが増える要因のひとつだと考えられます。
 以前は樹にサッチュコートSなどを塗布していましたが、手間がかかるわりにそれほど効果がないため、手作業で幼虫の駆除をしていました。しかし、それも労力と時間がかかり、他の仕事にかまけてスルー。
 三年前、「バイオリサ・カミキリ」という微生物農薬の試供品を試してみたのがきっかけとなり、それ以降、毎年使うようになりました。作業は簡単で、菌の付着した幅2cmほどの帯を幹に巻くだけです。カミキリムシに産卵させないことで、繫殖のサイクルを断ち切っているのですね。二年目以降は幼虫や成虫の出た穴が見られなくなりました。ただ、価格が比較的高いので、使うとしたら、被害と駆除の手間との兼ね合いですね。