四季盛農園 式森彦人が、果樹・柑橘の栽培から販売について、約1年間執筆した月刊誌「現代農業」への平成27年の寄稿文を紹介します。

現代農業平成27年1月号 先輩農家からのアドバイス

縮 伐


間伐で収量も品質もアップ

 

永年作物である果樹は、今年植えて来年収穫というわけにはいかないため、定植時にあらかじめ残す樹と切る樹を決めておき、標準の本数より多めに植えておきます。これを計画密植といいます。

密植により、単反当たりの収量をできるだけ早く確保することが目的です。
 しかし、そのままの状態で放置すると、
枝と枝が重なりあい、影になる部分が枯れてきます。せん定でその枝を切ると、上のほうにしか葉が残らず、ほうきを逆さまにしたような樹になります。これでは品質や病害虫など、さまざまな面で障害が生じてきます。
 そこで、隣同士、枝が重なる時期を見計らって間伐します。樹一本当たりの葉面積を多くとり、できるだけ太陽の光を取り込むことが大切です。すると、味をはじめ、品質アップにつながります。
 その他、間伐の利点として、次のようなことが挙げられます。
・日陰の解消、土の乾燥により、糖度が上昇
・光を十分に受け、また、風通しもよくなるため、品質(着色など)が向上
・カイガラムシ類や黒点病などが減少
・労働効率の向上
・収量の増加

主枝ごとに縮伐
 実際の作業では、未収穫の時期を短くするため、縮伐という方法をとります。間伐する樹を何年かかけて、順次切り縮めていくわけです。亜主枝、側枝などには触らず、はじめから主枝を切り落とします。亜主枝、側枝を切ると、その後、徒長枝が出て、逆に樹が繫茂してしまうことがあるからです。
 アドバイスは以下の通りです。
・縮伐する樹を決めたら、その作業を何年で終えるか考える
 反当たりの収量を落とさず、かつ、となりの樹も大きくしていく、その兼ね合いです。
・縮伐は必ず裏年に
 樹の生理を利用します。つまり裏年の樹は花が少なく実にいく養分が少なくなります。栄養成長となるで、間伐後に樹が回復しやすくなります。
・縮伐する前に最後のひと稼ぎ
 縮伐する前年、切る主枝も残す主枝も、せん定、摘果を軽くしておき、収量を確保します。